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友人関係をうまく作る方法:適切な距離を保つ秘訣

友人関係をうまく作る方法:適切な距離を保つ秘訣

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1tonariメディア編集部

友人関係をうまく築くためには、相手との距離感を適切に保つことが非常に重要です。友人関係は固定的なものではなく、時の流れや状況によって変化するものです。私たちは無意識のうちに、友人との距離感を見極め、相手の「触れてはいけない部分」を尊重しながら関係を築いています。

この記事では、「友人関係」「適切な距離」という考え方を中心に、友人関係の作り方と維持するためのポイントを解説していきます。

1. 友人関係は変化することが前提

友人関係は、家族や親戚といった血縁関係とは異なり、常に固定的なものではありません。友人関係は自身の状況やライフステージに応じて変わるものです。学生時代の友人とは、卒業後に会う頻度が減ることもあれば、逆に社会に出てから新しい友人ができることもあります。新しい趣味を始めたことで友人関係が広がることもありますし、職場の異動や転職によって友人との関わりが薄れることもあるでしょう。

人間関係は動的で、ライフスタイルや価値観の変化に伴って自然に変わるものです。それゆえに、固定的に同じ友人関係を維持しようとするのではなく、変化を受け入れながら柔軟に対応することが大切です。また、友人関係が変化することは決してネガティブなことではなく、新たな人間関係を築くチャンスでもあります。

 2. 友人関係には適切な距離感が必要

とはいえ、大切な友人とずっと良い関係でいたいと思うことは自然な欲求です。その場合、友人関係を長く続けるためには、相手の状況やライフイベントなどから生じる価値観の変化に留意しつつ、適切な距離感を保つことが重要です。親しい友人であっても、相手には自分と異なる価値観や考え方があるからです。相手に過度に依存したり、逆に相手に対して無関心になりすぎると、友人関係が崩れる原因になります。

特に、友人関係における「適切な距離感」とは、互いに尊重し合いながらも、相手のプライベートや価値観に干渉しすぎない関係性を言います。例えば、毎日のように連絡を取り合いたいと思う人もいれば、少し距離を置いて関係を続けたいと思う人もいます。それは、そのようなコミュニケーションが自分にとって快適だからです。

学術的には友人関係は「互いの社会―情緒的目的を促進しようと意図し、友好、親密さ、感情、相互扶助の様々な タイプと程度を含む、時間にとらわれない二人の間の自発的な相互依存」と定義されます(和田実「同性友人関係 その性および性役割タイプによる差異」社会心理学研究)。つまり、友人同士とは、こうしたコミュニケーションの頻度や様態を自分から調整できる、それによって相互に相手を尊重することができる関係性のことを言います。

ここで問題になるのは、相手との関係性に重きを置くあまり、相手にとっての「適切な距離感」を見極められずに、無理に距離を縮めようとしたり、逆に疎遠になりすぎてしまうということです。

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【事例】かつての友人と距離の詰め方に失敗して気まずくなった例

ミサキさん(20代・女性)とシホさん(20代・女性)は家が近かったこともあり、親ぐるみで親しい関係でした。保育園の頃からほとんど毎日顔を合わせており、小学校・中学校も同じ部活に入部しました。そんな中でしっかり者のミサキさんがおっとりしたシホさんの世話を焼くという関係性ができ、二人は仲のいい同級生というよりも姉妹のように見られていました。

しかし、そんな二人も受験期になると疎遠になっていきます。シホさんは指定校推薦が決まった反面、ミサキさんは第一志望の高校受験に向けて猛勉強をすることになったからです。双方とも嫌いになった訳ではなかったと思いますが、ミサキさんはぎりぎりまで第一志望にA判定が出なかったこともあり、シホさんへ声を掛ける日が減っていきました。物理的に今まで距離が近かったため、改めて連絡先を交換することもなく時間が過ぎ、高校に入学後は全く顔を合わせなくなったのです。

ミサキさんは高校卒業後の進路に都内の大学を選びました。初めての一人暮らしは刺激的でしたが、4年の大学生活を経て就職先に選んだのは地元で手広くインフラビジネスを展開している企業でした。実はミサキさんは学内の人間関係に疲弊し、腹の探り合いのいらない地元の友人とつきあっていきたいと考えていたからでした。高校卒業後は地元の友人とは関係が切れてしまっていたこともあり、母親の勧めもあってミサキさんは高校の同窓会に参加します。そこでシホさんと再会し、ミサキさんはシホさんとSNSの連絡先を交換することができました。

しかし、再開した二人の関係性は以前とはかなり異なるものになりました。シホさんは生来のおっとりしたところはあるものの、地元で短大を卒業後にすぐに就職しており、地元の情報や人脈に詳しくなっていました。自信にあふれたシホさんの様子に、ミサキさんは少し委縮しましたが、地域での情報に疎いミサキさんにとってシホさんは貴重な存在です。彼女はシホさんとの親密さを取り戻すべく、シホさんの好きなアーティストや漫画の話題を振るなど、積極的にシホさんの興味に合わせようとしました。さらに、シホさんが好きそうな番組まで見始め、話題を作ろうと努力したのです。

ところが、そうしたミサキさんの態度はシホさんにとって不快なものだったようです。シホさんは「そういうの嫌だからやめてよ」「無理しなくていいよ」と伝えていましたが、ミサキさんの態度は改まりませんでした。その後、シホさんは徐々にミサキさんのメッセージに応答する頻度が減り、最終的には未読で放置されるようになってしまったのです。ミサキさんは謝りたいと思いましたが、一方で自分がなぜこんなに嫌われてしまったのかは分からない様子でした。

3. 友人関係でこじれたら「気にしない」ことが一番よい解決法

人間関係は非常にデリケートなものです。友人関係にとどまらず、人間関係についてどのように対処するかは古来から人間の大きな関心事であり悩みでした。今でも相手の気をひくための心理的なテクニックは「モテテクニック」のような形で人口に膾炙しています。

この、複雑な人間関係に起因するストレスに対しどう対処するかという概念を対人ストレスコーピングと呼びます。ある調査では、大学生が友人関係で感じたストレスに対してどのように行動したかという問に対し、3つの行動パターンがあることがわかりました。

  1. ポジティブ関係コーピング

    相手に積極的に働きかけたり、自らの関わり方を改善するような関わり方。「反省した」「相手のことをよく知ろうとした」など。

  2. ネガティブ関係コーピング

    人間関係を積極的に壊すような関わり方。「関わりあわないようにした」「話をしないようにした」など。

  3. 解決先送りコーピング

    人間関係のストレスを軽視し、問題から逃げようとする関わり方。「気にしないようにした」「何とかなると思った」など。

この3つの行動パターンについて、女性は男性よりもポジティブ関係コーピングを使い、男性はネガティブ関係コーピングを行うことがわかっています。つまり、女性のほうが友人関係を維持したいと望み、男性のほうが面倒な友人となれば関係を切り捨てる傾向があるのです。

事例のミサキさんは友人であるシホさんとの関係にポジティブ関係コーピングを続けました。しかし、シホさんはそのようなミサキさんの行動にむしろ否定的な反応をしています。実は、ポジティブ関係コーピングはあまりいい影響を与えないのです。関係を断ち切ろうとするネガティブ関係コーピングも同様によい効果はありません。したがって、実は関係性自体を最も維持できるのは「何もしない」ことなのです。

このことは、相手に合わせすぎるとかえって人間関係を悪化させるということを示しています。

4. 友人関係を円滑にするのは適切な内省と自己理解

こうした友人との関係を円滑にするためには、「なぜ自分が相手に合わせすぎてしまったのか」という視点を持つことが重要です。そのための第一歩となるのが内省です。

自己理解とは、自分の感情、価値観、行動パターンなど、自分が自分に対して持っている「私ってこういう人だ」という観念(自己概念)を理解することです。この自己概念は自分の固有の物事の考え方だけではなく、周囲から自分がどう見られているかということからも生じます。例えば事例では学生時代はおっとりしていると思われていたシホさんが社会人になって自信にあふれていたのは、周囲からそのように見られ、自己概念が「私はおっとりしているんだ」から「私はしっかりしている人なんだ」と変化した部分も少なからずあると考えられます。

こうした友人の変化に対し、受け入れがたいと思う際に重要になるのは内省です。自分が以前持っていた相手に対する固定的なイメージや役割が大きく変わると、それに対応することが難しくなることがあるからです。このような状況に直面したとき、自分自身が相手の変化にどう反応しているかを内省することが求められます。友人が変わること自体は自然なことであり、それに対する自分の感情や反応を理解することが関係性をうまく保つための鍵となります。「なぜ相手の変化に違和感を覚えるのか」「自分が相手に期待していたものは何か」「その期待が今も正当か」という問いを自分に投げかけることが重要です。

内省を通じて、自分が相手に対して抱いていた期待が過去のものであり、現在の状況には合わなくなっていることに気づくことで、相手の新たな姿を受け入れる余裕が生まれます。このように、相手の変化を受け入れるためには、まず自分の内面を整理し、過去に固執せず、柔軟に対応することが必要です。友人関係は固定的ではなく、時間や環境の変化に応じて進化していくものであるため、それを自然なこととして捉える姿勢が大切です。

さらに、このような内省を通じて自己理解が深まると、相手が変化すること自体を脅威と感じることが少なくなります。自分が何を大切にし、何に不安を感じるかを知ることで、友人の成長や変化に対してよりオープンになり、関係性を維持しながら適切な距離感を保つことができるようになります。友人の変化を柔軟に受け入れ、それに適応する力は、長期的な友人関係を築く上で欠かせない要素と言えるでしょう。

5.友人関係と自己開示

よりよい友人関係を築くために、「自己開示」は非常に重要な要素です。自己開示とは、自分の考えや感情、価値観などを他者に伝えることです。心理学的には、人間関係が親密になる過程で、互いに自己開示を行うことが不可欠とされています。自己開示の量や深さが増すことで、友人関係は徐々に深まり、相互理解が進んでいきます。

自己開示のプロセスは、段階理論という考え方に基づいています。段階理論は、親密な関係がいくつかの段階を経て形成されるというもので、最初は表面的な話題から始まり、徐々にプライベートな領域へと進んでいくことで関係が深まっていきます。

初対面の段階では、表面的な自己開示が行われます。趣味や仕事、日常生活など比較的浅い話題が中心です。この段階では、相手の反応を見ながら少しずつ自分を開示し、相手がどれくらい自分と価値観を共有できるか、また信頼できるかを探ります。こうした表面的な自己開示は、相手に安心感を与え、友人関係の基礎を築く重要なステップです。

次の段階では、互いにプライベートな感情や悩み、過去の経験など、より深い自己開示が行われるようになります。このプロセスは、相手との心理的な距離を縮め、信頼関係を強化するために不可欠です。ただし、自己開示のバランスを保つことが重要です。一方だけが深い話をして、もう一方が表面的な話題にとどまってしまうと、関係が不均衡になり、相手にプレッシャーや負担を与えてしまいます。

自己開示が適切に行われると、友情はさらに深まります。相手が自分の話を受け入れ、共感してくれることで、互いに信頼が深まり、親密な関係が築かれます。この段階では、自己開示の内容もよりプライベートで個人的なものに変わります。例えば、家族や恋愛、将来の夢や不安など、人生における重要なテーマを共有するようになります。このように、自己開示を通じて互いの信頼が強まり、深い友情が形成されていきます。

ただし、自己開示のペースやタイミングを誤ると、親密化過程は失敗する可能性があります。例えば、相手がまだ心を開く準備ができていない段階で、過度にプライベートな話題を持ち出してしまうと、相手に負担を与え、逆に距離を置かれてしまうことがあります。また、一方的に自己開示を進めることは、相手にとってその関係が重荷になり、関係が冷める原因にもなりかねません。したがって、相手の反応を見ながら自己開示を進めることが重要です。

友人関係の真の親密さは、丁寧に進められ、積み重ねられた自己開示によって生まれます。相手を尊重してこのプロセスを行うことで、友人関係を長く深く保つことができるのです。

6.友人のドボンポイントを尊重することの重要性

友人関係を築く上で、相手の「ドボンポイント」を尊重することは非常に重要です。ドボンポイントとは、相手が大事にしているこれだけは譲れないという価値観のことです。恋愛や親密な人間関係に限らず、友人関係でも相手のドボンポイントを無視すると、大きなトラブルを引き起こす可能性があります。

例えば、プライバシーを非常に重視している友人を大切にしたいなら、プライベートな話題に過度に踏み込むことは避けるべきです。また、友人が朝早起きしてランニングすることを自分の大切な習慣にしているなら、それが出来なくなるような時間帯まで一緒に過ごすことは避けたほうがいいでしょう。

ドボンポイントを無視してしまうと、相手との関係が悪化し、最悪の場合、友人関係が途絶えてしまうこともあります。逆に、相手のドボンポイントを尊重し、互いの価値観に配慮することで、より強固な友人関係を築くことができるのです。

ドボンポイントが生まれる要因の一つは、成育環境です。私たちの価値観や感情的な反応は、幼少期からの家庭環境や育てられ方に強く影響されます。成育環境が異なる友人同士では、ドボンポイントも異なるため、その点を理解し合うことが大切です。

自分の価値観やドボンポイントを明確にすることで、友人関係において余計な誤解や摩擦を避けることができます。友人に対しても同様に、自分の価値観や限界を伝えることで、相手が無意識に自分のドボンポイントに触れてしまうことを防ぐことができます。

友人関係は固定的なものではなく、時に応じて変化し続けます。その変化を受け入れ、適切な距離感を保つことで、長く良好な関係を築くことができるでしょう。


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