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騒音トラブルを防ぐ住まい選びの秘訣とは?

騒音トラブルを防ぐ住まい選びの秘訣とは?

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1tonariメディア編集部

住宅地での騒音トラブルは、近隣住民との関係を悪化させるだけでなく、場合によっては精神的な負担を引き起こし、生活の質を低下させます。この問題の背景には、単なる音の問題以上に、ライフスタイルの違いが深く関わっています。本稿では、騒音トラブルのよくある事例や原因を分析し、トラブルを防ぐための対策を紹介します。

電球

事例 隣家から聞こえる話し声

T田さん(男性・20代)は転職を機に社員寮を出、新しく賃貸アパートを契約することになりました。退去までの時間が限られていたため、あわただしく平日に内覧できる数件の物件を回り、そのうちの1件に入居先を決めて契約することになりました。

転居の日、T田さんは疲れた体を休めようと早くベッドに入りました。ところが隣の家から声が響いてきて、気になって眠れません。常にうるさいというほどではないのですが、ときどきびくっとするような大きな声で話したり、笑ったり、時には怒鳴るような声も聞こえます。声は深夜まで続きました。文句を言うほどの騒音ではないかと思いなおして横になりましたが、T田さんの気は休まりませんでした。

隣家の声に悩まされる日は続きました。ベットの位置を変えたいと思っても、部屋の構造上おける場所は限られています。試しに壁からずらしてみたりしても響き方は変わらないようです。T田さんは不眠気味になってしまい、管理会社を通じてクレームを入れました。管理会社は注意を促す文書を投函してくれたのですが、その後も特に効果は見られませんでした。

T田さんは結局契約更新を待たず、転居することになりました。

よくある騒音トラブルの例

T田さんの例だけではなく、騒音トラブルは生活音や趣味、日常的な行動の中で頻繁に発生します。民間会社の調査では、アパート・マンション住まいの住民のうち騒音に悩んだ経験がある人は78.2%に上ります。また、マンション管理会社・居住者を対象としたまた、国土交通省の調査では、過去1年間のトラブルの発生状況 につき、「居住者間の行為、マナーをめぐるもの」が 60.5%と最も多くなりました。この具体的内容については、「生活音」が 43.6% と最も多く、音に関するトラブルは最も生じやすいものと言えます。

騒音トラブルとなる音の例として、下記のようなものが挙げられます。

生活音

生活音は足音や生活のなかで生じる音のことで、家電を使用するときの音、引き戸の開閉音、話し声や子供の泣き声、ペットの鳴き声など多岐にわたります。前掲の調査では、特に足音に関する悩みを挙げた方は多く、前述の調査では32%の人が生活音のなかで最も「足音が響く」と感じています。生活に伴うものであり、気を付けていても生じてしまうものだけに対応に悩む人も多いことが伺えます。

趣味や活動によって生じる音

楽器の演奏やカラオケ、宴会などの喧騒がうるさいと感じる人もいます。バーベキューや花火など室外で行う活動では音が周囲に筒抜けになってしまうため、より騒がしさを感じやすくなります。楽器の音はそれ自体が比較的大きな音(ピアノで90~110dB、地下鉄の騒音と同等の騒がしさ)になるため、防音設備のない家で演奏をする場合は周囲への配慮は必須です。

騒音トラブルの原因

騒音トラブルは、音そのものの大きさが原因となる場合だけでなく、建物の構造上の理由や、生活スタイルによる状況認識の違いが要因となります。以下はその代表的な例です。

音に対する感受性の相違

ある人にとって気にならない音でも、別の人にとってはストレスの原因となる場合があります。例えば自分の子どもやペットの声などは気にならないという人でも、他者の子どもやペットの声は気になるという人もいます。また、テレビやラジオの音、ステレオから流れる音楽は自分にとって快適でも、第三者から見て騒音レベルに達していることもあります。こうした音に対する感受性の違いが騒音に対する認識の違いになり、トラブルに発展することがあります。

建物の構造上の問題

上下階の接触面積が大きいマンションなどの集合住宅では、上階の足音が下階に響きやすいといった、建物のつくりに起因して音が漏れやすい状況にあります。また、戸建ての場合は換気扇やエアコンのダクトなど物理的に音が漏れる隙間が多く、想像以上に音が外に伝わってしまうという問題があります。

ライフスタイルの多様化による問題

ライフスタイルが多様化し、生活時間帯は人によってさまざまです。また、その人の年齢、生活環境によっても音の感じ方は異なります。例えば睡眠に不満がある中年層について「寝ている時に、外部の音がうるさく感じる」という人は5割に達しますが、同じく睡眠不満があっても、高齢層ではその割合が1割ほど減じるという調査結果も出ています。

早朝から活動する人や在宅ワークをする人などが増えたことも騒音トラブルにつながっている可能性があります。民間会社の調査では、オンライン会議に参加した人の 「オンライン会議で参加する自分以外の人の周辺の音をうるさいと感じたことはある」と答えた人が51.7%に達しました。こうした生活スタイルの変化が騒音トラブルを顕在化させている一因になっています。

騒音トラブルが深刻化する理由

住居における騒音トラブルは生活している場所でおこるため、様々な理由から解消されず長期化したり深刻化してしまうことが見られます。ここではその理由をいくつか具体例をあげて紹介します。

音の感じ方は主観的な要素があるから

音の大きさはデシベル(dB)という基準で図ることができますが、デシベルの数値が高いからと言って必ずしも不快な状況になるわけではありません。たとえば地下鉄の車内は80dBでパチンコ店内とほぼ同等ですが、不快感を感じる程度は人によって異なります。

このように、何を「うるさい」と感じるかは個人の感覚に大きく左右されます。このような主観性の違いから、「自分は問題ないのに、なぜクレームを受けるのか」といった感情の対立が生じやすく、問題解決が難しくなります。

継続的で、日常生活に影響を与えるから

騒音トラブルは一時的なものではなく、日常的に繰り返されるケースもあります。たとえば、毎日同じ時間帯に発生する音や、昼夜問わず断続的に続く音は、被害者にとって生活の質を大きく損ないます。

また、突発的に聞こえる大声やペットの吠える声などは予期できないことであり、その発生時間帯や頻度によっては看過できないほどのストレスに繋がります。このような音に関する不満の「積み重ね」が蓄積することで、感情的な対立に発展する可能性が高まります。

当事者同士のコミュニケーションが不足している

多くの騒音トラブルは、当事者間の適切なコミュニケーション不足が原因で深刻化します。総務省の調査では全国の自治会等の加入率の推移は 2020年では 71.7%で、地域社会におけるつながりの希薄化が認められます。調査ではライフスタイルの変化によって地域コミュニ ティに関わる機会や時間の減少に影響している可能性があると指摘されており、自治会に限らず住民同士のコミュニケーションの場や機会が減少している可能性が伺えます。

こうした状況下において騒音トラブルが生じた場合は、直接的な対話を避けて第三者(管理会社や自治体など)に介入を求めることがありますが、相手にとっては「対話の機会を奪われた」と感じたり、「いきなり攻撃された」と受け取る可能性があります。また、直接苦情を伝える側も、感情的になって攻撃的な態度を取ってしまうと、相手の反発を招きやすく、問題解決どころか対立がエスカレートする原因になります。

騒音に悩まされた場合の対処法

騒音によって生活に支障が出たり、ストレスが生じた場合、取りうる方法はいくつかあります。

最も望ましいのは当事者同士のコミュニケーションによって解決する方法です。自分が好意を抱く相手の生活環境を害したいと思う人は少ないため、日頃から良好な関係性を築けている相手であれば、直接の対話によって改善を見込むことができるでしょう。

当事者間に全く交渉がなかったり、過去にトラブルが起こっていた場合などは第三者に仲介を頼むこともできます。マンションやアパートであれば管理会社、戸建ての場合は自治体の騒音相談窓口や公害苦情相談窓口を利用することができます。ただし、騒音についての苦情を第三者を介して伝えるため、誤解が生じたり、より深い対立につながる可能性も懸念されます。

騒音トラブルが生じない住居を選ぶ5つのポイント

騒音トラブルは発生してしまうと対処に心理的な負荷もかかります。そのため、当初から騒音トラブルになりにくい住居を選ぶということが重要です。その際に気を付けておくべき5つのポイントを紹介します。

1 時間帯や曜日を変えて何度か下見に行く

物件を見学する際、昼間だけでなく、朝や夜、平日や休日など複数の時間帯に訪れることが重要です。昼間は静かでも、夜間や早朝に隣家や近隣で騒音が発生するケースもあります。また、休日になると子どもが外で遊ぶ音や趣味の音が増える可能性もあるため、自身の生活リズムに合わせ、複数の時間に周囲を訪問することで、実際の生活環境を把握できます。

2 内見時に不動産業者に近隣住民の情報を確認する

不動産業者に対して、「隣接する住人の生活状況」について尋ねることも有効です。例えば、ペットを飼っている家庭があるか、夜勤が多い人が住んでいるか、高齢者が多いかなど、隣人の属性を把握することで、音に関する潜在的なトラブルを予測できます。

また、内見時に「これまで住人間でのトラブルがあったか」について確認することも重要です。不動産業者や管理会社は、過去に起きた騒音トラブルや住民間のクレームについて把握している場合があります。例えば、「上階や隣室で頻繁に足音や騒音の苦情があった」などの情報を聞くことで、事前に問題のある住居を避けられる可能性があります。また、そうした情報を持っていない不動産業者や管理会社には、オーナーへの確認含め問い合わせに誠実に対応してくれるかを確認しましょう。実際にトラブルに発展した場合対応してくれるかどうかを判断する基準にできます。

3 物件の構造や遮音性能を確認する

住居の建物構造も、騒音トラブルを防ぐ大きなポイントです。例えば以下のような点を確認しておきましょう。

  • 壁や床の厚み:鉄筋コンクリート造(RC構造)は遮音性能が高い傾向があります。
  • 窓やドア:二重窓や防音ドアが設置されているかを確認しましょう。
  • 共用廊下:内廊下(建物内に廊下がある構造)は外部の音が入りにくいです。

4 周辺環境のチェックをする

住居の周辺環境も騒音トラブルに大きく影響します。特に近隣施設の状況や交通量、電車の線路からの近さなどは周囲を回るだけでも得られる情報が多いものです。公園、学校、保育園、工場、飲食店など、音の発生源になりうる建物がどの程度近いかなど、一度実際に歩いて情報を得ておきましょう。また、共用スペースについても確認しておきたいところです。具体的には共有部分がどのような構造になっているか、ゴミ置き場の管理はどのようになっているか、駐車場・駐輪場のスペースの有無などの利用状況を確認することで、トラブルの予兆をつかめることがあります。

5 時間的に余裕をもって探す

上記の1~4のポイントはどれも難しいことではありませんが、時間に追われて物件探しをするとこうした調査の時間を十分に確保できない可能性があります。引っ越しは金銭的にも負担がかかるため、十分な下調べをすることが望ましく、実際に住んでしまってからのトラブルは良好な住環境を得るために自分がある程度譲歩・我慢する必要もあります。だからこそ、ある程度時間の余裕をもって引っ越し先を探しておくことが望ましいと言えます。

自分が騒音トラブルを生まないために出来ること

騒音トラブルについては自分が加害者にならないということも重要な姿勢です。そのために気を付けておくべき点を紹介します。

隣人には自分から挨拶をし、コミュニケーションを適度に取る

日頃から挨拶や簡単な会話を通じて良好な関係を築いておくと、問題が発生した際にもスムーズに話し合いができます。有事の際に助け合うことになる関係でもあるため、自分から挨拶をするなどコミュニケーションを図っておきましょう。

挨拶には様々な効果があり、よい印象を与えたり、親しみやすさを感じさせます。名古屋芸術大学教授の阿部孝氏は挨拶をすることは日常的行為、儀礼的行為であるとしながらも、道徳心を養い、他者に感謝を伝えるための行動と述べています。挨拶を日頃から行っておくことで、話し合いに応じやすい雰囲気や近くに住んでいる者としての良好な関係性を構築しておくことで、トラブルにまで発展させずに騒音を収めることができる可能性があります。

自分が出している音に配慮する

騒音トラブルは相互的な問題である場合が多いため、自分が発している音にも気を配りましょう。例えばテレビや楽器など音を出す際は窓を閉める、窓に隙間をふさぐような工夫をするなどの音漏れ対策や、振動対策カーペットを敷いて足音に配慮する姿勢など、些細なことでも気が付いたことから実行してみましょう。

クレームが入った場合でも、こうした取り組みをしていることを伝えると一定の理解を得られる場合もあります。戸建であるか集合住宅であるかは問わず、同じエリアで生活するものとして、自分も配慮していく姿勢が求められます。

自分が譲れない生活に関するこだわり以外は妥協する

どれだけ慎重に住まいを選んだとしても、実際に住んでみないと分からないことや、隣人が入れ替わるなどの状況は起こりえます。ライフスタイルが多様化している現在、自分と同じような価値観、考え方ばかりの人ではありません。そのため、自分にとって最も譲れないこと、優先度の高いこと以外は妥協することも重要です。

たとえば職場・学校へのアクセスを優先したい場合に騒音があるのはやむを得ないといった判断をしたり、鳴き声の響く鳥を飼う場合はアクセスを妥協してもペット可物件を探すといった行動が考えられます。

騒音トラブルのない住まい探しは自分の価値観を知ることから

騒音トラブルを防ぐ住まい探しには、自分自身の価値観を明確にすることが欠かせません。静寂を重視するのか、利便性を優先するのか、家族やペットとの生活をどうデザインするのか、自分の生活において「譲れないポイント」を知ることが重要です。譲れない価値観が明確であれば、住まい探しの際に迷いを減らし、妥協できる点とのバランスを取りやすくなります。

また、住む地域や建物の環境が自分の価値観に合致しているかどうかを確認することで、入居後のトラブルを予防しやすくなります。騒音トラブルのない快適な住環境を得るためには、自分の理想と現実をしっかり照らし合わせながら慎重に選択することが大切です。


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