人とのつながり。「ひととなり」を知ればイイ感じ。

母と娘の関係を健全に保つには? 依存関係に陥らないためのポイント

母と娘の関係を健全に保つには? 依存関係に陥らないためのポイント

アバター画像

1tonariメディア編集部

母と娘の関係は深く特別なものですが、親密さが行き過ぎると摩擦や依存が生まれることもあります。この記事では、母娘関係が健全に保たれるケースとそうでないケースの違い、そしてお互いを尊重し合うための具体的な方法を解説します。

母と娘の関係における重要性

母娘関係は、親子関係の中でも特別な意味を持つとされています。それは、母と娘がしばしば共感的なつながりを持ち、感情的にも深い影響を及ぼし合う関係であるからです。

心理学者ナンシー・チョドロウは、母親が幼少期の娘に与える影響は、アイデンティティの形成や性別役割の認識にまで及ぶと指摘しています。また、日本においては特に、母娘の関係が他の家族関係に比べて親密であることが多いとされ、母親は娘の「支え手」として機能するだけでなく、娘にとっての最初のロールモデルとなります。

しかし、この親密さが、時として娘の精神的自立を妨げる要因となる場合があります。母親は、娘が成人しても心理的に「離れがたい」と感じることがあり、その結果、娘の自立に対して過剰な期待や不安を抱くことがあるのです。この関係性のダイナミクスは、世代を超えて引き継がれる傾向があるため、一度形成された母娘の関係は、娘が母親になる際にも影響を及ぼすことが少なくありません。

母と娘の関係における主な課題

母娘関係においては、愛情深く支え合う一方で、過剰な親密さや依存が生じやすい関係です。現代の母娘関係では、親密性が増すことで、分離不安や共依存といった課題が顕在化しています。

1 親密性の増加

現代の母娘関係は、以前にも増して親密性が高まっていると言われています。この背景には、社会的な変化が影響している可能性があります。たとえば、核家族化が進む中で母娘が互いに強い情緒的な支えを求めるようになり、心理的な距離が縮まる傾向があります。

研究では、母親が娘に対して持つ期待や願望が、時として娘に過剰なプレッシャーを与えることが示されています。娘が母親の価値観や生き方に従おうとするあまり、自分自身のアイデンティティを見失う危険性も指摘されています。

2 分離不安

母子関係では子どもが母親と離れることを恐れる心理が注目され、子どもの発達に焦点を当てて捉えられてきました。しかし近年では、生涯にわたる発達という視点から、親としての成長過程の一環として母親側の分離不安が注目されるようになっています。

母親側の分離不安とは、子どもを残していくことについて母親の側に生じるさびしさや心配、罪悪感といった 不快な感情状態と定義されますが、最近の研究では青年期の娘に対しても同様の葛藤が生じることから、母親が娘との心理的な距離が生じることに対して抱く不安や寂しさも指すようになりました。娘が成長し、精神的に自立していく過程で、母親がこの不安を抱えることは珍しくありません。

特に、母親が娘を「自分の一部」と感じる場合、分離不安は強くなる傾向があります。この不安が母親の過干渉やコントロール的な行動に繋がり、娘の独立を妨げることもあります。

3 共依存

親密性の増加や分離不安が強まると、母娘関係は共依存的な性質を帯びることがあります。共依存とは、母親が娘の人生に過度に関与し、娘もそれに応える形で母親に精神的に依存する関係性を指します。

この関係性は、母親が娘を「支えられるべき存在」と見なし続ける一方で、娘が母親の期待に応えようと自己を犠牲にするという形で現れることがあります。結果的に、双方が個人としての成長を妨げられる可能性があります。

母と娘の関係における心理的構造

母娘関係は愛情や親密さがからみあう複雑な関係です。母子関係を健全に保つには、母親の分離不安や共依存のリスクを理解し、バランスが崩れているときには是正する努力が求められます。

母娘関係の3つの特徴

昭和女子大学生活心理研究所特別研究員である花井聡子氏と、昭和女子大学大学院生活機構研究科特任教授である藤崎春代氏は、母娘関係を「信頼・受容」「服従」「分離・独立」という要素に分けて説明しています。ここではその研究を援用しながら、母と娘の関係の特徴を解説します。

  1. 信頼・受容

    この要素は、母親が娘を信頼し、娘も母親の存在に安心感を持つ関係を表します。「母はいつでも私を見守り、受け入れてくれる」「困ったときには母を頼りたい」といった感情がここに含まれます。この信頼感は、娘が精神的に安定し、自分自身の価値観を形成する基盤となります。

  2. 服従

    母親の起源や感情などを気にし、それに娘が従うという関係を表します。例えば「娘が母の機嫌を気にしながら行動する」「母の言いなりになって行動する」という言動などが該当します。これは「仲良し母娘」といった関係性になることもありますが、この関係性が強くなりすぎると娘の主体性の形成を阻害することになります。

  3. 分離・独立

    「分離・独立」は、娘が母親との心理的な距離を保ち、自分自身の価値観やライフスタイルを確立できている関係を表します。「母と私は別々の個人である」「私は母親とは異なる考え方を持つ」という感覚は、娘が精神的に成熟していく上で不可欠です。

母が娘の成長に抱く分離不安

子どもが成長して親から自立を始める青年期に入ると、親自身も中年期を迎え、親としての役割から徐々に解放されていきます。この時期は、子どもの精神的な自立と親のアイデンティティの再構築が密接に関わり合いながら、親子関係が新たな形へと変化していく重要なタイミングとなります。

この関係の変化にあたり、母親が娘の成長や精神的な成熟・自立することに自分の生きがいを喪失したり、娘が自分の一部であるような感覚を持ち続けてしまうような場合、母親が娘の生活に過度に干渉する可能性があります。母親が自分の生活の中心を娘に置いている場合、娘の自立は母親にとって大きな喪失感を伴うものとなり、それがさらに不安感を増幅させるのです。

公認心理士の信田さよ子氏は、「あの子一人では何もできない、私が助けてあげなければ」と母親がケアを与えた結果、ケアによって子どもを支配する構造が見られることを指摘しています。母親が良かれと思い、善意や愛によって行っている言動が子供にとって支配や束縛につながっている状況は、母親にとっては思いもよらないことです。娘の成長は母親の無自覚な干渉からの脱却になるため、そのことによって母親が自分のアイデンティティを奪われたような不安を感じてしまうのです。

母と娘の関係の在り方が世代を超えて伝わる仕組み

親子関係は、単なる親と子の一対一のつながりに留まらず、世代を超えて受け継がれるパターンが存在します。親が養育者として子どもを育てるとき、世代から世代へと引き継がれていく性質のことを「世代間伝達」と呼びます。

研究では、母親がその母親からどう育てられたかという「娘としての自分」を、現在の「自身の娘」へ投影し、娘がその感情や性格を抱いていると思い込む心理的現象が見られることがわかっています。また、母親自身が過去における「自身の母親」の自分への接し方と現在の「母親としての自分」を比べ、自身の母親が持っていただろう感情を自分のものだと思いこんでしまうという現象も見られます。例えば、母親が自分の母親から過剰な期待やコントロールを受けていた場合、それを否定しつつも、同様の行動を自分の娘に繰り返してしまうという状況は、母が娘に対し、自分の育てられ方をパターンとして繰り返してしまう世代間伝達が起こっていると言えます。

これは、幼少期に形成された愛着スタイルや親から受けた影響が母親自身の中に残り、それが次世代の親子関係に作用するためです。この仕組みは、特に物理的・心理的にも距離が近く共依存関係を導きやすい娘関係において顕著であり、母親が自覚しないまま娘に自身の価値観や不安、愛情の表現方法を押し付けてしまうことが少なくありません。

研究によれば、世代間伝達は必ずしも直接的ではなく、母親が自身の母親との関係をどのように再解釈し、対処したかによって、娘との関係性が変わる可能性があるとされています。つまり、母親が過去の親子関係を見直し、適切な距離感や愛情の伝え方を学ぶことで、負の連鎖を断ち切ることができるのです。

母と娘の関係性も時代とともに変化する

近年の研究では、現代の母娘関係において親密性が向上する一方で、娘が母親に対して「服従的」な傾向を持つ場合があることが示されています。これは、核家族化や社会的変化によって母と娘の心理的距離がより近くなり、母親が娘の生活や意思決定に強く関与することが増えているためと考えられます。

具体的には、娘が母親を「信頼できる存在」として受け入れつつも、「母親の期待に応えなければならない」というプレッシャーを感じるケースが増加しています。この服従傾向は、母親が持つ分離不安が強いほど顕著であり、娘の自立や意思決定に影響を及ぼすことが懸念されています。

一方で、親密性の向上そのものは、母娘関係を深め、心理的安定感をもたらす側面も持っています。特に「信頼・受容」が高い関係では、娘が自分の悩みや課題を母親に相談しやすくなるため、結果として精神的な支えを得やすいというメリットもあります。しかし、この親密性が過剰になると、共依存的な関係に陥るリスクがあり、母親が娘の選択や生活に過度に介入することによって、娘の個性や自立が阻害される場合があります。

母と娘が健全な関係を築く方法

母と娘の関係は、近すぎると共依存に陥り、遠すぎると疎遠になるという繊細なバランスがあります。ここでは、母親と娘それぞれが健全な関係を築くためにどうすればよいか、その方法を説明します。

母親向けアドバイス:干渉ではなくサポートをする

母親が娘の成長や自立を喜ばしいと感じつつも、心理的には「離れることが怖い」と思う分離不安を抱えることは珍しくありません。この不安をコントロールするためには、母親自身が自分の人生を充実させることが重要です。

母親自身が楽しめる趣味や新しい学びをことなどもよい方法です。物理的に娘と離れる時間を作ることで娘への過干渉を防ぐことができます。また、キャリアやスキルアップを目指す活動を始めるのも有効です。「自分自身を楽しむ母親」の姿勢は、娘にとっても健全なロールモデルとなります。

 娘が自分の価値観を築き、独り立ちしていくことは、親として誇るべき成長です。 娘が話しているときは、アドバイスをするよりも、まずは聞くことに徹するよう心がけましょう。「それでどう思ったの?」といった質問をすることで、娘の考えや感情を深く理解するきっかけになります。


娘の選択に口を挟むのではなく、「困ったときはいつでも相談を聞く」という姿勢を見せることが重要です。そうすることで必要なときに手を差し伸べられる関係を築くことができきます。

娘向けアドバイス:母親と自分の違いを認め、受け入れる

母親の価値観や期待を過剰だと感じる場合は、まずは物理的に距離をおける環境をつくることが大切です。 そのうえで、 「自分と母親の考え方や価値観は違っていて良い」と認められるような自己肯定感を育てていきましょう。「母親と自分が違う存在である」ことを客観的に認めることは精神的な自立の第一歩です。

自己肯定感を育てるためには、小さな成功体験を積むことや、自分自身の思考のパターンや癖を見直し、ネガティブなパターンがあればそれが本当に適切なものかどうかを見直すことが重要です。娘にとって母親に提案をし、それが認められるということは成功体験になります。たとえば自分が望まないふれあいがあった場合に、「今はそれは嫌だ」という拒否の言葉を伝えてもいいのだとわかることは娘にとって大きな意味を持ちます。攻撃的ではなく、感情を伝えるトレーニングを心がけましょう。

母親の大事にしていることを自分が大事にできないかもしれないという不安や「母親の期待に応えられないと感じる」ことが、子どもにとってアイデンティティの危機や心理的な負担となる場合があることは、心理学の多くの研究で観察されています。また、母娘関係において親密性が高いほど、娘が母親の価値観を内在化する傾向も見られます。その一方で、内在化した価値観と自己の信念が一致しない場合、分離不安やアイデンティティの葛藤が生じる可能性があることから、「母親と自分の考え方が違う」ことに気づき、認めることはきわめて大切なプロセスです。

母と娘が健全な関係性を築くために

母と娘の関係は、他の親子関係とは異なる独特の親密さと影響力を持っています。しかし、この親密さが過剰になると、分離不安や共依存といった課題が生じ、双方の成長を妨げる可能性があります。母親は娘を自分の一部と感じることで、過干渉やコントロール的な行動を取ることがあり、娘は母親の価値観に従うあまり、自分自身のアイデンティティを見失うことがあります。

母と娘が健全な関係を築くには、互いの価値観の違いを認識し、尊重する姿勢が重要です。「母と娘の価値観はそれぞれ異なること」を理解し、その違いを受け入れることで、母親は娘の自立を支援し、娘は自己の価値観を形成することができます。また、母親は自分の人生を楽しむための趣味や自己成長に投資し、娘の選択を尊重することで、適切な距離感を保つ努力が求められます。娘も母親との関係で感じる不満や違和感を冷静に伝える練習をすることで、双方が健全なコミュニケーションを築けるでしょう。

母娘関係は深い愛情に基づいていますが、それだけにバランスを保つことが不可欠です。それぞれが独立した存在としての自分を大切にしつつ、互いを尊重することで、健全で持続可能な関係を育むことができるのです。

母娘関係の違いを理解するために「ドボン診断」を活用しよう

母と娘の関係を健全に保つためには、互いの価値観や譲れない点を理解し、それを尊重することが不可欠です。しかし、実際にはお互いの考えや気持ちを明確に言葉で伝えることが難しく、無意識のうちに価値観の違いが摩擦やストレスの原因になってしまうことがあります。こうした摩擦を減らし、より良い関係を築くための一歩として、「ドボン診断」を活用することをお勧めします。

「ドボン診断」は、自分自身がどのような価値観や優先順位を持ち、どのポイントが譲れない「ドボンポイント」なのかを明らかにする診断ツールです。この診断を通じて、自分の中にある隠れた価値観を認識すると同時に、母親や娘が大切にしている価値観との違いを客観的に理解することができます。

たとえば、母親が「家族の絆」を最重要視している一方で、娘が「自分の自由」を優先する場合、価値観の違いから生まれる衝突が避けられないこともあります。しかし、ドボン診断を通じてお互いの価値観を明らかにすることで、相手の意図や感情を理解しやすくなり、具体的な解決策を見つけることが可能になります。

母娘関係だけでなく、恋人との関係にも応用できる「ドボン診断」は、関係性を健全に保つための強力なツールです。母と娘が互いに尊重し合いながら、より良い関係を築くために、ぜひ試してみてください。


自分でも自覚できない価値観を見える化するツール「ドボン診断」

「ドボン診断」とは、自分でも認知していないこともある「譲れない価値観」を見える化するツールです。家族心理学の専門家が監修し、解像度がばらつきがちな「価値観」を共通の指標で数値化します。これにより、一人一人が育ってきた環境や、そこから育まれる「譲れない価値観」を家族心理学の知見から可視化でき、人間関係の改善に繋げられます。

アバター画像

1tonariメディア編集部

1tonariメディアの企画・運営を担当しています。人間関係について悩めるすべての方へ向けたフラットな情報を発信します。

おすすめ記事ランキング

Ranking

1tonariのサービスと解決ソリューション

Service

「1tonari(ひととなり)」では「よく生きること=ウェルビーイングの実現」のため、下記のサービスを展開しています。

  • ドボン診断

    ドボン診断

    自分でも認知していないこともある「譲れない価値観」を見える化するツール

  • 企業人経営

    企業人経営

    経営者と同じように社員が働ける仕組みを整える組織経営コンサルティングサービス

  • アトトリ婚

    アトトリ婚

    中小事業経営者・ご両家の親御様を対象としたお子様の婚活支援プログラム