「自営業の人との結婚は不安」という声がある中で、本当に大切なのは“職業”ではなく“価値観の相性”です。この記事では、自営業との結婚が問題なのではなく、不安を共有し解消できる関係かどうかが鍵であることを、実例と共に解説。自分の価値観を知る「ドボン診断」や専門支援サービス「アトトリ婚」も紹介しています。
目次
「自営業者は婚活で不利」という現実
結婚相談所の成婚データや婚活実態調査では、「自営業」は婚活市場において不利とされる傾向があります。たとえば、IBJ(日本結婚相談所連盟)の調査では、男性の職業別成婚率において経営者・会社役員(33.7%)、自営業(25.4%)は成婚率が30%前後にとどまっています。同じ自営業であっても弁護士(59.7%)や公認会計士(54.9%)はトップレベルの成婚率ですが、国家公務員(53.1%)や地方公務員(41.8%)と比べると相対的に不利であることが分かります。
また、フリーランス白書では自身の働き方に対する課題感として「収入がなかなか安定しない」(64.2%)、「社会的信用の低さ」(30.2%)を感じている人も多く存在しています。
さらに、婚活サービスを利用している女性の多くが「親に反対されそう」「安定感がない」といった理由で自営業の男性を最初から避けてしまう傾向にあるのも事実です。こうした背景には、かつての“終身雇用”や“企業神話”といった価値観が根強く残っていることが影響しています。
しかし、それはあくまで“イメージ”の話。実際には、自営業者の中にも安定した収入基盤を持ち、家庭を大切にする人はたくさんいます。本当に大事なのは、職業名よりも「その人がどんな価値観を持っているか」。婚活で迷ったときは、まずはその点に目を向けてみることが大切です。
自営業者との結婚に対する不安
筆者がご相談を受けていて耳にする自営業者との結婚に対する3大不安は以下の通りです。
- 収入が不安定なのではないかという不安
- 社会的信用が低いのではないかという不安(ローン審査や親の心配)
- 家庭を顧みないのではないかという不安
たしかに、これらは無視できない懸念ですが、すべての自営業者に当てはまるわけではありません。
例えば、自営業者は収入が不安定というイメージがありますが、実際には「複数の収入源を持っていて安定している」「景気変動に対応できるように備えている」など、リスク管理に長けている人も多くいます。特に10年以上続いている事業主の場合、会社員以上に堅実な収入基盤を持っていることも珍しくありません。
また、自営業者の社会的信用が低いという懸念は、実は正確ではありません。確かに会社員と比較して「企業名」や「勤務年数」といった分かりやすい評価軸が使えない分、不透明に見えることもあります。しかし、継続的な事業運営や確定申告の記録、業種によっては法人化や契約実績など、公的にも評価されうる信用の「見える化」は可能です。実際、長年黒字経営を続けている個人事業主や、法人代表として社会的責任を果たしている自営業者は、銀行や取引先からも高く評価されています。つまり「社会的信用がない」のではなく、「信用の見せ方が異なるだけ」。それを知っているかどうかで、印象は大きく変わるのです。
「家庭を顧みないのでは?」という不安については、たしかに自営業は仕事とプライベートの境界が曖昧になりやすい面があります。しかし、それは裏を返せば “自分で時間を設計できる”ということでもあります。実際、平日の日中に子どもの送迎を担当したり、急な家族の用事にも柔軟に対応できるなど、会社員にはない強みを活かしている自営業者も多くいます。特に家族を大切にしたいという価値観を持つ人であれば、自営業の自由度の高さはむしろ家庭重視のスタイルに向いていると言えるでしょう。
実は結婚後も「うまくいっている」ケースは多い
「自営業の人と結婚すると苦労する」と言われがちですが、実際には結婚生活がうまくいっているカップルも少なくありません。むしろ、会社員にはないメリットを実感しているケースも多く見られます。
前述のとおり、自営業者であっても経済的に安定した基盤がある人も多く存在します。また、自営業者は経営者としての社交性や誠実さを求められることも多いため、パートナーとの関係でも信頼や責任感を大切にする傾向があります。日々の仕事で顧客や取引先と信頼関係を築いているからこそ、家族との関係にも誠実に向き合おうとする人が少なくありません。
また、自分の意思で働き方を調整できることから、家族との時間を意識的に取りやすく、「家庭をないがしろにしない」スタンスを貫けるのも強みです。たとえば子供がいない期間は営業活動を積極的に行う、子どもが小さいうちは短時間で働けるよう調整するなど、自営業者自身の考えに沿って働き方を変えることができるのは会社員にはない柔軟性といえます。
さらに近年、結婚相談でも「職業より価値観や人間性を重視したい」という女性が増えています。これは不確定要素が大きい社会情勢や、大企業であっても安定した雇用が必ずしも継続されるわけではないという現実により、「安定した職」を求める傾向が薄れつつあるからです。そのような時代だからこそ、「お互いを支え合える関係性」を築くことに重きを置く風潮が強まっていると言えます。
つまり、「自営業だから不安」と考えるのではなく、「自営業という働き方の中でどう生きているか」に目を向けることが、結婚後の幸せにつながる鍵となります。
自営業者の魅力は確かな「安定」がみえない時代に発揮される
社会保険労務士として労働環境を見ていると、もはや「正社員であれば安定」という時代ではありません。大企業でさえリストラや早期退職が進むなかで、「ひとつの会社にいれば一生安泰」という考え方は現実にそぐわなくなってきています。キャリアコンサルタントの立場からも、「自らのスキルで収入を得られること」「変化に対応できる柔軟性を持っていること」がむしろ現代における「安定」の本質だと感じます。
また仲人として多くの成婚事例を見てきた中でも、最終的な決断を促すのは会社の名前や肩書きではなく、「どんな環境でも人との信頼関係を築き、生活を整えていける」という人柄であることが決め手となっているのです。
自営業者はまさに自身でビジネスを切り開いてきているのであり、「自分で人生を設計できる力」を持つ人のほうが優位な時代と言っても過言ではないでしょう。
自営業者と結婚することのメリット
自営業のパートナーと結婚することで得られるメリットは、実は少なくありません。
まず、自営業の相手だからといって、自分のキャリアを犠牲にする必要はまったくありません。むしろ、共働きとして収入の柱が複数あることは、家計の安定にとって大きなプラス要素です。特に自営業者の場合、固定給ではなく業績によって収入が変動する分、もう一方のパートナーが安定収入を持っていることは心強いとされます。これは逆もまた然りで、会社員の収入に自営業の柔軟な収入が加わることで、経済的なリスク分散にもつながります。
もちろん、パートナーに自分と一緒に事業を支えてほしいというニーズを持つ自営業者もいます。その場合は税制上のメリットも無視できません。たとえば、配偶者を「専従者」として事業に関与させれば、所得税法上の「青色事業専従者給与」や「白色申告専従者控除」を活用できるケースがあり、家計全体の税負担を抑えることも可能です。また、家庭の支出と事業経費の線引きを明確にすることで、合理的な経費計上やキャッシュフローの改善も期待できます。
このように、自営業者との結婚は経済的にマイナスどころか、視点を変えれば“戦略的パートナーシップ”とも言えるものです。お互いの働き方を尊重し合いながら、柔軟で安定した家庭を築ける可能性が広がっています。
事例紹介:金銭的な価値観を丁寧にすり合わせて不安を安心に変える
会社員のAさん(30代・女性)は、個人事業主として映像制作をしているBさん(30代・男性)と交際を始めました。誠実で人柄も良く、将来を考えられる相手だと感じていた一方で、結婚を視野に入れた段階でBさんには「収入に波があるのでは」という不安を抱くようになりました。
そこでBさんの提案で、「1tonari」チームによるカウンセリングを受けることになりました。カウンセリングの場では、自営業者のメリットとリスクについて丁寧に説明を行い、Bさんにも積極的に説明に加わっていただきました。
特にAさんが不安を感じていた収入については、Bさんの直近3年分の決算書を一緒に確認することで、実際には大きな変動がなく、むしろ堅実な経営をしていることがわかりました。
加えて、将来への備えとして、個人型確定拠出年金(iDeCo)の活用や、ライフプランに合わせた積立制度を利用することで老後資金を着実に形成していく方針を立て、不安をカバーする仕組みも整えました。
また、このプロセスを通じて二人は金銭感覚やリスクの捉え方の違いにも気づくことができました。特に「融資や投資」に関する価値観では考え方にズレがあったため、今後は融資については慎重に、投資などの大きな判断は必ず相談のうえで進めるといった具体的なルールを決めることで、互いに納得のいく着地点を見出しました。
このように、相手の職業や肩書きだけで判断するのではなく、「自分の不安を言葉にし、それを一緒に解決できるかどうか」を見極めることが、安心できる関係性を築く鍵になるのです。(※本事例は実際の事例をもとに、ご本人が特定できないよう匿名化・加工してご紹介しています。)
自営業との結婚が問題なのではなく、「不安を解消できない関係」が問題
自営業者との結婚に不安を抱えるのは、自然なことです。けれども本質的な問題は、“相手が自営業であること”ではなく、自分の不安や疑問にきちんと向き合ってくれない相手を選んでしまうことなのです。
たとえば「収入の波があることが不安」「家族との時間をどれだけ持てるか知りたい」など、あなたが抱く不安を一つひとつ共有し、共に考え、歩幅を合わせようとする姿勢があるかどうか。それこそが、職業を問わず結婚相手として最も重要な資質です。
そのためにはまず、自分自身がどんな価値観を持っているかを知ることが第一歩になります。私たちが提供している「ドボン診断」は、あなたの“譲れないポイント”や“相性が悪い相手の傾向”を可視化するツールです。診断結果をもとに、どんな人となら安心して暮らせるのか、自分の中で明確になっていきます。
また、「家業を支えることになったらどうしよう」「親との関係が複雑そう」といったより具体的な懸念がある方には、自営業・後継者との出会いに特化した婚活支援サービス「アトトリ婚」のご利用もおすすめです。事前にすり合わせるべきテーマを押さえたマッチングと、キャリアの専門家による継続的なフォローがあるからこそ、不安を一人で抱え込む必要はありません。
どんな未来を歩むかは、どんな人と歩くか次第です。 まずは、あなたの「ドボンポイント」を明確にするところから始めてみませんか?