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結婚における幸福とは?定義や幸福になるためのアプロ―チを解説

結婚における幸福とは?定義や幸福になるためのアプロ―チを解説

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村井 真子

結婚において、多くの人が「幸福」を求めていますが、その幸福の本質について考えたことはあるでしょうか?この記事では結婚において得られる幸福の定義、それを得るためのアプローチについてキャリアコンサルタントが解説します。

1)幸福の定義

幸福とは、多面的な概念であり、心理学的、社会学的な観点から様々な定義がなされています。

デジタル大辞林では幸福の定義として「満ち足りていること。不平や不満がなく、たのしいこと。また、そのさま。しあわせ。」と記載があります。私たちは「充足している、楽しい」と感じるときに私たちが幸福だと考えるということです。

しかし、この充足感の基準は個人ごとに異なります。また、同じ状況下にあっても自分と他人をある基準で比較し、相対的に幸福感を感じることもあります。そうしたことから、最近の最近の心理学的研究では、幸福感と脳内物質とを関連づけることが一般的になっています。幸せだと感じている人にどういう脳内物質が出ているか、ということを調べるという方法です。

精神科医の樺沢紫苑氏によると、私たちが幸せを感じているときに分泌される脳内物質は100種類以上にも上ります。そのなかでも、日常的な幸福感を構成する主たる幸福物質としてドーパミン、オキシトシン、セロトニンの3つが特に注目されています。この3つを樺沢氏は下記のように説明しています。

ドーパミン心臓がドキドキするような高揚を伴う幸福感
セロトニンさわやか、安らかな、穏やかな幸福感
オキシトシンつながりや愛情、愛に包まれた幸福感

つまり、幸福とはこれらの脳内物質が出ている状態と定義することができます。

2)恋愛と結婚において求められる幸福の違い

恋愛において求められる幸福と、結婚において求められる幸福は異なります。しかし、婚活においてはこの両者が混同されやすく、そのために交際相手が結婚相手として適切ではないという判断に至ったり、そもそも交際に至らないという事態が起こりやすくなります。ここからは前述の樺沢氏の著書に出てくる「ドーパミン的な幸福」「オキシトシン的幸福」「セロトニン的幸福」という言葉を使いながら紹介します。

恋愛における幸福:ドーパミン的な幸福

恋愛においてよく求められる幸福は、ドーパミンが分泌されるような幸福です。ドーパミンは「もっともっと」という欲望を刺激する脳内物質であり、主に恋愛の初期段階で強く分泌されます。このため、恋愛中には相手に対する期待や新鮮さによって、一時的に強い幸福感を感じます。

理化学研究所の研究では、同じように親しい存在である恋人と友人の写真を見比べたとき、恋人の写真を見たときに脳皮質の内側眼窩前頭野および内側前頭前野でドーパミン神経が活性化するという現象が確認されています。

ドーパミンは脳を覚醒させ、生産性の向上や達成感をもたらすと言われます。前掲の樺沢氏は、その著書でドーパミンのことを「自己成長物質」と「学習物質」と呼んでいます。ドーパミンは自己成長や達成感を感じさせながら私たちを成長に駆り立てていくホルモンなのです。

しかし、このドーパミンの効果は時間の経過とともに逓減します。例えば素敵な恋人を得て天にも昇る幸せを感じていても、交際期間が続くとその状態に慣れてしまうということです。男女ともに、半年から3年ほどで恋愛気分を忘れてしまうのはこうしたホルモンの働きによります。

無意識の幸福:セロトニン的な幸福

翻って、「恋愛は非日常、結婚は日常」ということがよく言われます。日々の生活を共にし、支え合い、その状態を継続できるという期待と安心感を得られることが結婚の効果です。政府の調査でも、結婚したい理由の第1位は男女ともに「好きな人と生活をしたいから」ですが、20代~39歳の男女では「家族を持ちたいから」「精神的な安らぎの場を持ちたいから」が2位、3位と続いています。つまり、婚活をしている人は一定期間継続して生活をすることを前提に結婚相手を選んでいるのです。

一定期間継続して生活するという点においては、ドーパミンが日々分泌されるようなドラマチックな関係性ではなく、むしろ穏やかな、ときめかない関係のほうが望ましいかもしれません。そのような関係性で得られる幸福に対して分泌されるホルモンとしてはセロトニンやオキシトシンが挙げられます。

セロトニンには、怒りや焦りなどのマイナスな感情を抑制し、精神を安定させる効果や、朝起きる時に体を活動できる状態にさせる効果があります。セロトニン神経がしっかり働くことでうつ病の抑制や依存症のリスクを減らすことができます。

セロトニンがしっかりと機能できる状況を整えることは、自身の健康を維持するだけではなく、適切な人間関係の構築や仕事における生産性の増加にもつながります。結婚生活は一人で行うものではなく、夫婦、子どもなど家族で営むものですから、こうした自身の健康をコントロールできるホルモンが適切に分泌されるような環境であることが必要です。

結婚における幸福:オキシトシン的な幸福

ここで注目すべきは、“愛情ホルモン”や“抱擁ホルモン(cuddle hormone)”とも呼ばれるオキシトシンです。オキシトシンは家族や心を許せる相手とのスキンシップや、リラクゼーション施術による肌の触覚刺激によっても分泌されることが分かっています。オキシトシンは不安を軽減させたり、共感や他者への信頼感などを醸成するような働きがあります。オキシトシンが分泌されるような夫婦や家族との関係性こそが、結婚生活を継続させる秘訣だと言えるでしょう。

こうしたホルモンは互いに作用しあって効果を発揮します。セロトニンによって情緒が安定すると、人間関係の距離感が適切に保てるので、家族に対しても感謝や尊敬を抱く余裕がでてきます。家族から愛情を伝え返されることで信頼関係が増し、さらに家族に対する安心感が高まります。家族に対して信頼が増すことによってますます精神的に安定するため、より幸福な状態を継続できるのです。

3)結婚における幸福の求め方:3つの幸福のためのアプローチ

結婚は一般に幸せなライフイベントではありますが、独身時代とは異なる生活習慣をパートナーと共に作り、そこに慣れるという過程ではストレスも感じやすくなります。例えば、独身の気分のまま自由気ままに過ごすことは相手にとって批難の対象になりかねません。育ってきた環境が異なるパートナーと共に生きるには、それぞれの価値観や考え方を認め合い、お互いにとって心地よい状態に調整する努力が必要になります。ここでは、そのためのアプローチとして3つのポイントをご紹介します。

1 自分にとって重要なことが何かを理解する

もっとも重要になるのは、自分にとって本質的に何が大切か、何が譲れないことなのかを自分がまず理解するということです。

私たちはさまざまな価値観を持っています。デジタル大辞林によると価値観とは「物事を評価する際に基準とする、何にどういう価値を認めるかという判断」と定義されており、私たちが何かを選んだり、行動する際に参考とする指標のようなものを言います。この価値観は一人一人異なり、生まれ育った環境や経験など様々な要因からはぐくまれているものです。

この価値観について私たちが意識している部分はとても狭いものです。アンコンシャス・バイアス(無意識の偏見)に象徴されるように、私たちは自分の価値観のすべてを明確に理解、言語化できているわけではありません。特に、生まれ育った環境において「当然」であったことほどその傾向が強くなると言っても過言ではないでしょう。例えば外食に行く場合の支出できる額の基準や考え方、清潔感の程度など、生活に密着しているからこそ言語化する機会のないことは多いのです。

結婚においてはこうした価値観のすり合わせをパートナーとともに行うことになりますが、こうした言語化できていない価値観については事前に会話する必要性も感じないため、同居して初めてわかる、ということもあります。比較することで自分にとっての「当然」が浮き彫りになるのです。

これらの自分のライフスタイルを規定する「当然」について自覚し、その中でも自分にとって絶対に犯しがたい価値観、これだけは譲れないといった価値観を自覚することは、パートナーと良好な関係を築く礎になるでしょう。

2 心理的ホメオスタシスを克服し、相手のために変わる覚悟を持つ

結婚生活は二人で営むものです。したがって、相手が自分に合わせてくれることを期待するだけではなく、 自分も相手に合わせていくことが求められます。

しかし、私たちには本能的に現状を維持しようとする傾向があります。これを「心理的ホメオスタシス」と呼びます。ホメオスタシスとは、生物が外部環境の変化に対応して内部の状態を安定させるメカニズムのことですが、これは心理的な領域にも当てはまります。新しい状況や環境に適応するためにはエネルギーやリソースを使う必要があり、脳がその負担を軽減しようとするからです。たとえ変化がポジティブなものであっても、人はしばしばその変化に対して抵抗を示します。たとえば、結婚や転職、引っ越しといった状況が期待されるものであっても、そのプロセスにおいて不安やストレスを感じるのは、心理的ホメオスタシスが原因の一つといえます。

このように変化に対して抵抗する心理について、結婚生活を営むにあたってはそれを理解し、理性で受け容れていく必要があります。結婚は感情だけではなく、互いの価値観を尊重し合うための「調整」の場でもあります。お互いの違いを受け入れつつ、相手のために自らも変わる覚悟を示すことで、より深い信頼と愛情が育まれるでしょう。

3 どうしても譲れない価値観について相手と伝えあい、受け容れる

相手のために譲歩したいと考えても、どうしてもこれだけは譲れないという価値観もあります。それは育ってきた環境に根深く起因するものであったり、自分にとって大きく尊厳に関わるようなものであることも多く、決して軽視されるべきものではありません。

そのような価値観については、無理に妥協することはなく、パートナーに対してきちんと伝えていくことが必要です。些細なことだからと黙っていては、相手はその価値観を尊重することができません。また、自分が自己開示をする姿勢を持つことで、パートナーからも開示を受けやすくなります(返報性の法則)。

ここで大事なのは、自分にとってどうしても譲れない価値観かどうかをきちんと自分で見極めておくということです。あれもこれも大事にしたいと思っても、円満に結婚生活を送りたいと思えば相手の価値観も同様に尊重する必要があります。さらに価値観は経験の蓄積などの要因で変遷するものです。その観点からも、自分にとって変わらない、それに抵触してしまうと二人で幸福な家庭を築いていくことが難しくなるという価値観をきちんと見定め、互いに伝えておくことは重要です。そのような重要な価値観を大事にされる経験こそが、相手を尊重することになるからです。

4)結婚における幸福とは逓減しない幸せを得ること

結婚における幸福感はドーパミンが分泌されるような一過性のものではありません。ドキドキしたりハラハラするのは恋愛の醍醐味ではありますが、生きていくうえで重要な自身の心身の健康と充足感を得られるのは、結婚が日常だからです。孤独ではなく、信頼できる相手と安心してコミュニケーションを取れる関係を築くことでセロトニンやオキシトシンが分泌され、さらに心身が安定して幸福を感じられるといった関係が結婚のもたらす効果です。

結婚は互いの価値観のすり合わせから始まりますが、互いに譲れない部分を尊重しながら共に生きることで、その関係は持続可能なものになります。結婚を通じて得られる幸福は、単なる一時的な満足ではなく、信頼と愛情に基づく深い幸福感なのです。


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村井 真子

社会保険労務士・キャリアコンサルタント・MBA家業の総合士業事務所にて実務経験を積み、2014年愛知県豊橋市にて開業。LGBTQアライ。著書に『職場問題グレーゾーンのトリセツ』等。

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