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PTAは多様性の宝庫? PTA活動がダイバーシティの最高の実実践の場である理由

PTAは多様性の宝庫? PTA活動がダイバーシティの最高の実実践の場である理由

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1tonariメディア編集部

賛否両論あるPTA活動。多様な価値観がぶつかり合う中で、意見の対立や負担の偏りを感じている方も多いのではないでしょうか。この記事では、PTAが抱える課題と、その解決策を多角的に探りつつ、PTA活動をダイバーシティの実践の場として活かすヒントを探ります。

そもそもPTAとは? PTA活動に関する議論の論点

PTAとは、Parent-Teacher Associationの略語で、保護者と教職員がともに参加する社会教育団体のことです。子供たちの健やかな学校生活を支援するために活動しており、学校行事の支援やPTA主催のイベントの企画運営、地域住民との交流機会の創出やそれらの活動の財源確保のためのバザーやベルマーク活動などを行っています。

近年、このPTA活動が多くの議論を呼んでいます。PTA活動はボランティア活動ですが、保護者の働き方やライフスタイルが多様化している昨今、それぞれの保護者のPTA活動自体への価値観に差が生まれているからです。

PTA活動について好意的な意見の代表例は、下記のようなものです。

  • 子どもの成長により深く関われる
  • 学校や他の保護者との交流が得られ、情報交換などの機会が増える
  • 地域の活動に参加する機会が増え、自分の意見を行政・学校運営に反映できる

また、PTA活動について否定的な意見の代表例は、下記のようなものです。

  • PTA活動自体への意義が見いだせない
  • PTA活動へは賛同するが、開催時間帯に休暇が取れず参加できない
  • PTA活動へは賛同するが、家庭の事情で参加するための環境が整わない
  • PTA活動へは賛同するが、自分が共感・納得できる運営体制・理念ではない

このような様々な意見が出され、PTA活動に対する議論が深まっています。

PTAが抱える課題と多様性との関係

PTAが抱えるこれらの課題は、PTA活動が必ずしも当事者の自発的意思によって維持されているわけではないということに起因します。

実はPTAは任意団体であり、入退会は保護者の意思に任されています。しかし、実際にはPTAから退会することに対する嫌がらせ行為があることが報道された例があることや、退会届を用意しているPTAの割合が1割に満たないという状況からも、基本は暗黙の裡に加入を前提としているといえるでしょう。

そのような前提があるなか、PTAの構成員の価値観も多様化しています。PTA活動そのものへの賛否、PTAとしての活動範囲の適正・不適正の感覚だけでなく、担い手となる保護者自身のライフスタイルもPTA発足時の昭和20年代と比較すると大きな変化を経験しました。共働き家庭の増加や核家族化の進行により、平日日中に行われることの多い学校行事のサポートや会議の出席が保護者の負担になっている現実もあります。そのため、様々なかかわり方としてボランティアとして時間拘束が生じる活動のほかに金銭的な支援での参加や自分の興味関心のある分野でのコミットメントを検討するなどの取組が検討されています。

しかし、東京女子大学の有馬明恵教授らが行った意識調査で、PTA活動を変えることは難しいと7割を超える保護者が難しいと考えていることが分かりました。既存のルールや活動を変えることに対する抵抗があることで、多様な保護者の意見が集約されず、また現実的に変革が難しい状況が示唆されます。

保護者自身に加え、学校関係者、地域住民の考え方もまた多様になっています。学校には不審者対策など子どもたちの安全を守るための施策が図られ、その結果PTAと言えど気軽に学校に入りにくい雰囲気があるという場所もあります。また、多忙を極める教職員の実態が知られるにつれ、PTA行事をどこまで学校と共に行うべきかといった議論も生まれました。さらに、祭りなどの地域行事は過疎化や少子化の進行で縮小傾向にあり、担い手の不足からPTAへの負荷が高まっている状況もみられます。このように、保護者だけでなく、ステークホルダーの多様化もまたPTA活動の課題を産む要因となっています。

PTAというダイバーシティ実践の場

このような状況がPTA活動の存続や是非の議論に繋がっていますが、実は多くの保護者はPTA活動自体に対しては否定的ではなく、その効果や活動内容を一定程度肯定しています。東京都の意識調査では、PTA役員か否かを問わず、PTAに期待する項目として「子供たちの安全を守る」という項目がトップになりました。こうした期待に応えて活動をしていくためには、前掲のように多様な価値観を持ったステークホルダーと協調しつつ、活動を行っていく必要性が問われます。

この多様性、すなわちダイバーシティはビジネスや社会福祉の観点で注目を集める概念です。ダイバーシティとは人種や性別、年代、障がいの有無や宗教の別なく、あらゆる属性を持つ人々がそれぞれの立場で社会や組織に貢献していくこと、それによって自分の存在を認められることを指します。SDGsでの観点やビジネスの場での推進が目立ちますが、実はPTAこそダイバーシティを実践する場として最適です。

実は、ダイバーシティを進めるうえではいくつかの課題があることが指摘されています。そのなかでも大きなものが、ダイバーシティ推進に心理的な抵抗を感じる層が存在するということです。

パーソル総合研究所の分析では、ダイバーシティへの抵抗感を強く持つのは「中高年層の男性」「企業内の中心的ポジションにいる」「経済的に余裕がある」などの属性、つまり一般的に「社会的な地位が高い」層だということが指摘されています。それは、この層がダイバーシティを推進すべき層でありながら、すでにその組織内で一定の評価・ポジションを得ているからではないかだとだとされます。彼らにとって変化する必要性が薄いからこそ、ダイバーシティへの抵抗感が生まれるのです。

しかしPTAは男女の別を問わず保護者が加入する団体であり、保護者の多くが存続を望み、しかし運営のありように改革を必要と感じている組織です。また、多くのPTA役員の任期は1年または2年で設定されており、他の組織にはない流動性があります。さらに保護者自身の年代、出身地、就労状況なども様々であるなか、学校という共通の場があることによって共通の話題・体験もある程度担保されます。こうした組織は他のコミュニティではなかなか成立しにくいものであり、かつ活動を継続しているという点で特異です。こうしたPTAの組織的な特徴から、多様性の排斥はむしろ難しいものであり、ダイバーシティを前提として組織運営がなされる必要があるのです。

PTAでダイバーシティを推進することの子どものメリット

PTAがダイバーシティを推進することで、子どもは下記のようなメリットを受けることができます。

多様性を許容される学校生活

様々な文化的背景をもった子どもたちがその背景を尊重されることで自分のルーツに誇りを持てるようになります。また、そうした意識が学校運営に反映されることで、より多様性を受容し、自分自身の存在価値を感じられるような場になります。

広い視野の共有と合意形成

保護者や学校の様々な考え方に触れることで広い視野を得ることができます。また、それらの多様な意見をどのように扱うか、合意形成のプロセスを学ぶことができます。

社会性の獲得

PTA行事に参加することにより、自身の親、教師以外の大人とのかかわりが増えます。また、PTAは地域コミュニティの参加の窓口にもなることが多いため、PTA主催・共催の行事等に参加することで地域において子ども自身の社会性の獲得が見込めます。

PTAでダイバーシティを推進することの保護者のメリット

PTAがダイバーシティを推進することで、保護者自身もメリットを得られます。代表的なものを紹介します。

保護者の価値観の拡張・視野の拡張

保護者としてPTAに参加することで、自分では思いもよらない意見や着眼点の指摘を得られます。また、同じ保護者として対等な立場で意見交換ができることで、自身のアンコンシャスバイアス(無意識の偏見)に気が付く機会を得ることができます。

越境体験の場

普段、職場や仲のいい友人たちと過ごすことが多い場合、自身の考え方やものの見方が一義的になることがあります。しかし、PTAには様々な価値観の保護者が存在するため、自然と自身の考え方の偏りに気が付いたり、ビジネススキル・職位などが通用しないことでアンラーニングが図られます。こうした越境学習効果が認められる場に強制的に参加することで、自身の成長が得られます。

自己成長

PTAは多くの場合、同じ役職を何度もすることはないため、常に新しい仕事を与えられることになります。そのため自分自身の工夫や協調によって他者から感謝されたり、褒められるといった承認を受けることがあります。また逆に、自分の行動によって他のPTA役員等から指摘を受けることもあるでしょう。このような日々の繰り返しにより、PTA活動に参加することは自己成長に繋がります。

PTAでダイバーシティに取り組む際のヒント

PTAの組織運営にダイバーシティを取り入れていく場合、次のような方法が考えられます。

コミュニケーションを工夫する

意見交換会やワークショップを開催するなど、物理的に保護者間のコミュニケーションを促進する取組を行います。例えば子ども向けの催事を行う際に、合わせて保護者向けのプログラムを用意するなどの方法です。また、コミュニケーションツールも多様にすることなども考えられます。例えばプリント配布をデジタル化する、意見交換の場もオンラインで用意するなどの方法が考えられます。

役割分担を柔軟にする

手上げ制、指名制などが多いPTA役員の選出ですが、多くの保護者は実際にどのような活動をするのか不透明な状態で選出されています。その不安感の解消にもつながるため、選出後に改めて役割を割り振るといった選出の柔軟性や、役割ごとに進め方を任せるなどの方法が考えられます。会議の時間帯・頻度は各委員会に任せたり、伝達方法についても伝達のみを担当する役員を置くなど、参加するメンバーの特性に応じて調整していくとよいでしょう。

関わり方を多様にする

行事などの企画運営は役員が主体になって担うPTAが多いのですが、その企画部分だけに関わる、運営当日にのみ関わる、寄付で関わるといった多様な参加方法、関わり方を用意します。PTA自体には意義を感じていても通年で役員はできないというニーズや、乳幼児や介護を要する家族がおり土日の参加が難しいといったニーズをカバーすることができます。多様なかかわり方を選択できるようにすることで、参加率を上げる効果も期待できます。

PTAとして活動できる組織にいることも大切

PTAにはビジネスの場では得られない貴重な経験や、子どものために直接貢献することができるというメリットがあります。しかし、自身がPTAとして活動する際にはそれを許容する組織であるかどうかという点も大切です。少子化が進みPTAの担い手も少なくなってくる中、PTA活動の意義や越境体験効果を認め、積極的に参加を認められる組織に所属しているかどうかという観点を労働者が持ち、就労先を選ぶ時代の到来も近づいています。


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