付き合い始めのドキドキがなぜか続かない……この記事ではうまく行く恋愛関係とそうではない恋愛関係の違いや恋愛における関係維持のための方法を事例を交えて解説します。
目次
なぜ恋愛関係は冷めてしまうのか?
「恋愛がうまくいかない」「難しい」……そんな悩みを持つ人は少なくありません。民間会社の調査では「彼氏とうまくいかない」と思った経験のある20~30代女性は48.3%という結果が出ています。また、うまくいかないときに周囲に相談するか否かという点については、ひとりで抱え込む傾向は女性よりも男性のほうが強いという調査結果もあり、恋愛というプライベートな事柄については悩んでも適切な相談相手が見つからないという事情もあるようです。
付き合い始めのドキドキが時間とともに薄れてしまい、相手との関係に疑問を抱く。そんな悩みは多くの人が経験するものです。特に最近注目されている「蛙化現象」や、周囲の結婚・出産などの変化に焦りを感じる人も少なくありません。
恋愛が始まったばかりの頃は、何をしていても楽しく、相手のことを考えるだけで幸せな気持ちになるものです。しかし、このドキドキ感や幸福感が続かないのは、心理的・生理的な仕組みによるものです。
恋愛初期の幸福感は幸せホルモン「ドーパミン」に由来
恋愛初期には、脳内でドーパミンという「幸せホルモン」が大量に分泌されます。このホルモンは興奮や快感をもたらし、幸福感を生み出します。しかし、この効果は永続的ではありません。人は刺激に慣れる生き物なので、時間とともにドーパミンの分泌が減少し、最初の高揚感は徐々に落ち着いていきます。
結婚の幸福感についての研究では、中長期的にみると結婚してからの年数の経過に伴って満足度は低下し、結婚14年目あたりを底として、また上昇するU字カーブを描くことが知られています。同様に、恋愛初期の盛り上がりが冷めるのも自然なことなのです。
長続きする恋愛の幸せホルモンは「オキシトシン」へ移行
恋愛初期のドキドキ感を生み出すドーパミンの効果が薄れると、冷めてしまうと感じることがあります。しかし、それは恋愛が終わりを迎えるというわけではありません。むしろ、そこからが二人の本当の絆を育むスタート地点です。そして、その絆を深める役割を果たすのが「オキシトシン」というホルモンです。
オキシトシンは、別名「愛情ホルモン」とも呼ばれ、安心感や信頼感を高める効果があります。これは主にスキンシップや親密な交流を通じて分泌され、相手との結びつきを強化します。
恋愛が長続きするカップルでは、初期の興奮や高揚感に頼らず、オキシトシンを基盤とした安定した幸福感へと移行しています。
うまくいく恋愛関係の特徴
初期のドーパミン分泌期間が解けた後も、オキシトシンが分泌されるような幸せで安定した関係を続けているカップルには共通する特徴があります。それは、一時的なドキドキ感だけでなく、長期的な絆を育むための努力をしていることです。
1 相互の信頼を築いている
信頼は恋愛関係の土台です。日常の小さな約束を守る、嘘をつかないなど、安心感を与える行動を積み重ねることで、信頼関係が強化されます。
2 ポジティブな時間を共有している
一緒に楽しい思い出を作ることで、関係に新鮮さが生まれます。旅行や新しい趣味を始めるなど、日常とは少し違う体験を共有することが有効です。
3 感謝を忘れない
日々の些細な行動に感謝の言葉を伝えることで、関係がポジティブに循環します。「ありがとう」と伝えることでパートナーが自分に対してしてくれた行動に気づいていることを伝えることです。また、感謝を感じることは当人の心理的適応や幸福感と密接に結びついていることが研究で分かっており、相互の幸福感を高めてくれます。
うまくいかない恋愛関係の特徴
一方で、初期のドーパミン分泌期間が解けた後も、オキシトシンが分泌されないような関係性、うまくいかない関係に陥るカップルにもいくつかのパターンがあります。
1 依存が強すぎる
相手に過度に頼りすぎると、関係が息苦しくなりがちです。自分が精神面・金銭面などの要因で不安定な状態になると、パートナーに頼ることで自身を安定させようとしがちです。自分の生活や価値観をしっかり持つことがバランスの取れた関係の鍵です。
2 不安や猜疑心が強い
相手の行動を過剰に疑うことや、過度な不安を抱くことが関係を破綻させる原因になります。不安を抱えている場合、直接的に伝えるよりも冷静にコミュニケーションを取る努力が必要です。
3 ネガティブな感情が積み重なる
喧嘩やすれ違いが続くことで、ポジティブな記憶が薄れ、ネガティブな記憶が関係を支配してしまうことがあります。にも関わらず、別れ話が面倒である、周囲に対して気兼ねするなどの理由から関係を継続しようとすると、本人の幸福度が下がってしまうことが分かっています。
冷めてきてしまった恋愛 — 蛙化現象とは?
Z世代が選ぶ2023年上半期トレンドランキングで1位となった「蛙化現象」という言葉は、相手に好意を持たれると突然嫌悪感を抱いてしまうという心理的な現象を指します。心理学者の藤沢伸介が2004年に発表した論文「女子が恋愛過程で遭遇する蛙化現象」の用例が初出とされますが、好意を抱いている相手が自分に好意を持っていることが明らかになると、その相手に対して嫌悪感を持つようになる現象のことと定義づけられていました。現在ではこの意味だけではなく、交際相手などの嫌な面を見て幻滅することにも使われています。また、女性だけではなく男性にも生じる現象であることが研究で明らかにされています。
蛙化現象が起きる理由は解明されていませんが、本来の意味、現在の意味いずれにしても良好な関係に亀裂をいれるものであり、パートナーとの関係を維持したいと思うのであれば注意すべき内容であると言えます。
【事例】「なんで付き合っているんだろう」と思う理由を考える
ミユさん(30代・女性)とコウタさん(30代・男性)は、2年前から交際しています。二人はともに野球観戦が好きであること、就職している業界が同じなどの共通点があり、付き合い始めはとても自然で楽しい関係でした。しかし、最近ミユさんは「なんで付き合っているんだろう」と感じることが増えています。ミユさんは自分の年齢から考えるとコウタさんと結婚すべきだと考えていますが、コウタさんから積極的にその話題が出ることもなく、また別れるなら早い方がいいとも悩んでいました。
ミユさんからお話を伺うなかで、実はそう感じるようになった原因がいくつかあることが分かりました。
一つ目はコウタさんの異動により、生活リズムにずれが生じるようになったことです。今まではともに土日休みでしたが、コウタさんの異動先は土曜にも仕事が入りがちです。そのため、共に過ごす時間が自然と減ってしまい、「私ばかり相手に合わせている」という不満につながっています。
二つ目は、会話の量や質が減り、心の距離を感じるようになったことです。以前はデートの際に仕事や日々の出来事を互いに話し合い、「お疲れさま」と労わり合う会話が自然と生まれていました。しかし最近ではそもそも顔を合わせる時間自体が減っているほか、日々の小さな出来事については「わざわざ話す必要もない」と感じてメッセージを送ることもためらうようになっていました。
三つ目は、ミユさんが最近立て続けに周囲の友人や知人が結婚したり、出産したといった話を聞く機会があったことです。「そのようなことは自分たちのペースでいい」と考えていたミユさんですが、同世代の友人たちの変化に「私たちもそろそろ何か決めなければならないのでは」とプレッシャーを感じています。その一方で、コウタさんと将来について具体的に話し合ったことがなく、不安が募っている状況でした。
ミユさんはコウタさんに積極的な不満があるわけではないとのことでしたので、私たちはまずミユさんが何を最も不安に感じているかをドボン診断を用いて探ってみました。ミユさんは家族に対する期待が強く、一人でいる時間を持ちたいという希望がなかったので、診断結果をもとに、私たちはコウタさんとミユさんが物理的にコミュニケーションを増やす方向性でのアクションを提案しました。ミユさんからはコウタさんも一人で行動することは稀だと聞いたので、ミユさんのこの行動はコウタさんとの関係によい影響をもたらすと考えたからです。
具体的には、ミユさんに時間があるときに電話をしたり、「送らない方がいいかな」と思うようなメッセージも一度送ってみて反応を見る、などの行動を提案しました。電話はコウタさんのタイミングで切っていましたが、短い時で3分、長い時には1時間ほど話すこともあったようです。こうした小さなアクションでもミユさんは安心感を得ることができ、そうしたミユさんの姿にコウタさんも心地よさを感じているのか、二人の関係は良好なものに戻りました。また、ミユさんは家族が欲しいという自分の気持ちも正直にコウタさんに打ち明けました。実はコウタさんもミユさんと結婚を考えていたのですが、異動したばかりでタイミングを計っていたということでした。
この二人の事例では、ミユさんの不安がどんなところから生じているのかを一般論で片づけず、きちんと自分で考えて対処していることが好循環につながっています。また、相手のせいにするのではなく、ミユさん自身もアクションをしたことがよい結果につながった事例です。
健康的な恋愛関係を維持するために自分の価値観を知る
恋愛が「うまくいかない」「難しい」と感じたときこそ、二人の関係を見つめ直すチャンスです。なぜそのように感じているのか、自分にとってこの関係をどういうものにしたいのかを考えることは難しいときもありますが、自分を丁寧に扱う意味でもぜひ行いたいことです。何をないがしろにされると自分にとって怒りが生じ、不安が生まれるのかを考えることで、関係性を断つのか、維持するのかといった判断も容易になります。
自分が何を大切にしているのかを知り、焦りや不安に振り回されるのではなく、まずは小さな一歩をどう踏み出すかが、幸せになるためのカギになります。ドボン診断や私たちのチームのフィードバックもご活用いただき、自分を大切にする関係を作りましょう。