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「当たり前」に囚われないー多様な家族のあり方を知ることの意義

「当たり前」に囚われないー多様な家族のあり方を知ることの意義

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1tonariメディア編集部

「家族には明確な定義がない」と聞いて、どのような印象を持つでしょうか。

辞書を引けば「夫婦関係や親子・兄弟の血縁関係によって結ばれた親族関係を基礎にして成立する小集団」という固い語釈が書いてあります。

ですが、この説明では具体的に「家族」を定義することはできていません。辞書の語釈が曖昧になってしまう理由は、「家族」とは時代や場所、個人によって異なるものだからです。

現在の日本では、両親と子ども2人の4人世帯が「典型的な家族モデル」として取り扱われることが多いです。

しかし、実際はこの形に当てはまる家族ばかりではありません。そもそも日本の平均世帯人数は2016年時点で2.87人なので、4人家族モデルは平均的な日本の世帯人数とは合致していません。

また、様々なメディアで取り上げられるように家族の形は多様化しています。

一人親、事実婚のカップル、ステップファミリー、同性カップル、オープンマリッジなど、「男女の夫婦と子ども」という形に縛られない「新しい家族」が生まれているのです。

今までの「当たり前」に囚われない家族の形を知ることは、自分の中の理想の家族観を客観的に見つめなおすことにもつながります。今回はあえて「典型的ではない家族」に焦点を当てて、「当たり前」を解きほぐしていきましょう。

「新しい家族」とは?

先ほど「新しい家族が生まれている」と書きましたがこれはやや正確性を欠いています。より正確には、これまで社会から認識されていなかった、あるいは認められていなかった「家族」に対する理解が広がってきているのです。

例えば、一昔前であれば「一人親=子どもがかわいそう」というイメージで語られることが少なくありませんでした。

今でも「離婚した母親が苦労して一人で子どもを育てている」という状況を想像する人は多いかもしれませんが(そして実際に苦労されている方もたくさんいますが)、この典型的なイメージに当てはまらない家庭がたくさんあることも広く知られています。

離婚に対するネガティブなイメージの減少、第一線で活躍するシングルマザー(ファザー)の存在、働く子育て世代女性の増加など様々な要因が絡み合い、徐々に「どこにでもある家族の形」の一つとして認識されるようになってきました。

選択的に籍を入れない事実婚や、再婚や養子縁組によって血のつながらない子どもを育てるステップファミリーに対しても、いわれのない偏見は少なくなっています。

夫婦と同じ権利が保障されるわけではないものの、2015年に渋谷区が全国で初めて同性カップルのパートナーシップ制度を導入したことをきっかけに、同性カップルを「家族」として認める自治体も増えてきています。

また、夫(妻)以外のパートナーの存在を認めるオープンマリッジなども、批判的な意見の方が多いとはいえ、映画やドラマなどをきっかけに認知度が上がっているでしょう。

多様な家族のあり方を知ることの意義

とはいえ、多くの人はこうした「新しい家族」の存在を認識していても、積極的に知ろうとはしていないでしょう。特に、結婚を望む異性愛者からすれば「『当たり前』の結婚がしたい自分には関係がない話だ」と考えてしまうのも無理はありません。

しかし、冒頭で述べた通り「家族には明確な定義」がない以上、「当たり前の家族」も定義できないのです。

つまり、あなたにとって「当たり前」である家族の形が、ほかの人にとっても当たり前であるとは限らないと言えます。

自分の中にある「当たり前」を客観的に見つめなおすためには、多様な家族の在り方を知り、それらを踏まえて自分にとっての理想の形を考えることが近道です。

ここで重要なのは、「正解はない」ということです。色々と頭を巡らせた結果、「自分はやっぱり夫婦と子ども2人の家族を作りたいな」という結論に至るのであれば、それでよいのです。「新しい家族の形」を選ぶ人の方が優れている、という話ではありません。

逆に、真剣に向き合って考えた結果、典型的な家族ではない形が理想だとわかったなら、それもそれで問題ありません。あなたの相手は世間ではなく、将来のパートナーただ一人です。その人と考え方を共有し、お互いに尊重できればよいのです。今回は多様化する家族の形の一部をご紹介します。

事実婚:あえて籍を入れないパートナーの形

婚姻届を役所に提出して戸籍上の夫婦になる「法律婚」。これに対して、事実婚は婚姻届けを出さずに夫婦と同じ生活を送る結婚の形です。

一見すると同性カップルと同じように見えますが、事実婚の場合はお互いが夫婦として認識しており、周囲からも夫婦としてみなされています。そのため、法律婚の夫婦と同様の責任が相手に対して生じます。

「世帯変更届」を提出して世帯を同じにすることで、住民票に「妻(未届)」または「夫(未届)」と記載できるようになり、公的にも自分たちが事実婚のカップルであることを証明できます。

事実婚を選択する理由は様々ですが、一つにはどちらかが改姓する必要がないということが挙げられます。日本では、結婚するとどちらかの姓を選ばなければなりません。

改姓には「相手と同じ名字になれて嬉しい」「家族になったと実感できた」というポジティブな意見もある一方で、なかには「結婚後も、生まれ育った名字のままで暮らしたい」「仕事のことを考えると改姓のデメリットが大きい」という人も少なくありません。

ほかにも、結婚という制度自体に疑問を持っている人、相手のパートナーの家族や親戚との付き合いを避けたい人などが事実婚を選んでいます。

事実婚は、法律婚の夫婦と比べて税制上の優遇が受けられない点など、デメリットもありますが、お互いに名字を変えたくない理由がある場合などには有効な選択肢になるでしょう。

ステップファミリー:子どもと一緒に新しい家族を築く

ステップファミリーとは、子連れ再婚によってできる家族の形です。カップルの少なくともどちらか一方に、以前の関係で生まれた子どもがいる家庭のことを指します。子ども目線で言えば、「親の新しいパートナーとの関係を持つ子どもがいる家庭」と定義することもできます。

日本では、離婚とともに再婚の数も増加傾向にあるため、ステップファミリーの数も増えていると推測されています。

一口にステップファミリーといっても、その内実は複雑です。単純にパターン化しても、「妻の連れ子」「夫の連れ子」「お互いの連れ子」がいる場合に分けることができます。さらに、再婚後に二人の間で実子が生まれる場合もあります。

子どもの年齢や性別、離婚した元パートナーとの関係性などによっても、新しい家族を取り巻く状況は大きく異なります。

ステップファミリーとして幸せに暮らしていく上では、子どもの気持ちに寄り添った関係性の構築が大切です。無理に「親」になろうとして「お父さん」や「ママ」などの呼び方を強制したり、元パートナーと子どもの関わりを避けようとしたりしてしまうと、思わぬうちに子どもを傷つけてしまうこともあります。

パートナーの連れ子のことを大切にしつつも、自分の理想とする親子関係を押し付けずに、子ども目線で関係性を構築することが肝要だと言われています。

このようなステップファミリー特有の悩みや苦労もあるとはいえ、パートナーとパートナーの連れ子と一緒に幸せな関係を構築している人は少なくありません。

ステップファミリーの増加に伴って、様々な体験談が広く共有されるようになってきました。初婚の場合とは異なる部分も多くありますが、こういう家族の形があることも頭に入れて置くとよいでしょう。

別居婚:「夫婦=一緒に暮らす」に当てはまらない形

「別居」と聞くと、ついつい「夫婦仲が悪いのかな?」と想像してしまいますが、現在ではあえて別居を選択する夫婦も増えています。

ポイントなのは、転勤や親の介護などの事情で「仕方なく」別居している状態ではなく、お互いが望んで別居を選択しているという点です。別居婚にも様々なパターンがあります。

・お互いの家を行き来する夫婦:結婚してもお互いが独身時代に暮らしていた家などに別々に住み続けるスタイル。頻繁にどちらかの家に泊まったり、半同棲のカップルのような生活を続ける。

・週末のみ一緒に過ごす夫婦:週末などお互いが時間が取れるタイミングだけ一緒に過ごす。いわゆるデートをする関係を続けていく。

・近くで別々に暮らす夫婦:いつでも相手の家に行ける距離感で暮らしながらもお互いに自分の家を維持するスタイル。同じマンションで別の部屋を借りるなど、ほとんどの時間を一緒に共に過ごしつつ、自分だけの空間を確保する。

別居婚を選択する理由も様々です。例えば、仕事の関係で東京と大阪で暮らしているカップルが結婚した場合、どちらかが仕事を辞めないと一緒に暮らすことができない…ということもあります。

お互いが自分の仕事にやりがいを感じている場合は、無理に同居するのではなく、「隔週で週末に相手のところに行く」などお互いが納得できる約束の上で、別居婚を選択する人もいます。

他にも、自分だけの空間を大切にしたい人、一人きりの時間がないと息苦しく感じる人等にとっては、別居婚も一つの選択肢でしょう。

オープンマリッジ:不倫公認の夫婦関係?

最後に取り上げるオープンマリッジは、上記に比べてより「珍しい」夫婦の形です。

法律婚であれ、事実婚であれ、夫婦には「貞操義務」があります。要するに、不倫禁止ということです。

現在の日本では、このルールが社会的にも広く受け入れられています。不倫が発覚した政治家や芸能人、スポーツ選手などは厳しく批判されており、仕事を一気に失う場合もあります。

一般人にとっても不倫は大きなリスクです。配偶者に訴えられれば慰謝料を支払わなければなりませんし、離婚する場合にも不利な条件になる場合が多いです。

現在の日本は、社会的にも法律的にも「不倫=悪」という認識が広く共有されていると言えるでしょう。

しかし、時代や場所が変わればこの認識は必ずしも「当たり前」や「正義」ではありません。イスラム教では一夫多妻制が認められているのは有名な話です。日本でも正妻や妾という言葉が使われていたことから分かる通り、いわゆる上流社会では「男の浮気は当たり前」「第二婦人がいるのは当たり前」という時代もありました。

社会として「不倫」をどのように捉えるのが望ましいか?という議論はともかく、「夫婦としてどういうルールを作るか?」は基本的に二人の自由です。

中には、お互いが合意の上で、パートナーが別の相手と恋愛関係になったり、性行為をすることを認める関係性を築いているカップルもいるのです。

自分の中の「当たり前」や「普通」を可視化する

今回ご紹介したような「新しい形の家族」に対する考え方は人それぞれ違うでしょう。

「お互いの空間を尊重して別居婚をしたい」という人もいれば、「一緒に暮らさないのに結婚する意味ある?」という考えの人もいるはずです。

「パートナーに別の恋人がいるなんて許せない!」という人の割合は多いでしょうが、中には「正直、結婚もしたいけど、恋愛も続けたい」という人もいるでしょう。

これは正解/不正解ではなく、単にそれぞれが結婚に対して抱いている理想の違いです。

相手とこの結婚に対する譲れない価値観が共有できていれば、どれだけ変わった夫婦の形であっても全く問題ありません。

問題なのは、多くの人が自分の持っている理想を「当たり前」や「普通」のものだと考えてしまい、無意識のうちに「他の人も同じ認識のはずだ」と思い込んでしまっていることです。

自分に合ったパートナーと出会うためには、まずは「自分が求めている結婚」を客観的に見つめなおす必要があるでしょう。「新しい家族の形」に目を向けて、多様な夫婦の実情を知ることは、そのための助けになるはずです。

「自分には関係がないことだ」と蓋をするのではなく、自分の中の理想を明確化するためにも様々な家族、夫婦の形に目を向けてみてください。


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